日本編

東京の不動産市場で、いま投資家が無視できない“ねじれ”が起きています。

取引件数は減っている。

在庫は増えている。

それでも、東京の価格は大きく崩れていない。

普通なら、売れ行きが落ちれば価格も下がりそうなものです。

しかし、2026年夏の東京はそうなっていません。

東日本レインズによると、2026年7月の東京都中古マンション成約件数は1,863件、前年同月比13.9%減。東京23区だけを見ると1,509件、17.2%減で、前年割れは7カ月連続です。

ところが、東京都の中古マンション成約平均価格は7,004万円、前年同月比2.2%上昇。東京23区の成約㎡単価も135.77万円、前年比2.7%上昇し、実に75カ月連続で前年を上回りました。

これが今の東京市場です。

売れていないのに、高い。

そして、この状態こそが次の相場を考える重要なヒントになっています。

1|「売れない」は、すでに数字に出ている

まず押さえておきたいのが成約件数です。

首都圏全体でも、2026年7月の中古マンション成約件数は3,638件、前年同月比8.6%減。

4カ月連続の前年割れとなりました。

さらに首都圏の在庫件数は4万7,151件、前年比5.5%増。

在庫は5カ月連続で前年を上回っています。

つまり需給だけを見れば、

買い手の勢いは鈍っている。

これはかなり明確です。

特に東京23区では成約件数が前年比17.2%減。

東京だから何でも売れる、という状態ではなくなっています。

2|それでも、東京の価格は崩れていない

ここが最大の違和感です。

東京カンテイによると、2026年7月の東京23区中古マンション70㎡換算価格は1億2,724万円。

前月比では0.1%下落しましたが、依然として1.2億円台です。

しかも東日本レインズの成約データでは、東京23区の㎡単価は前年比プラス。

つまり、

売出価格には調整が入り始めているが、実際に成約する優良物件はまだ高い。

という構図が見えてきます。

ここを「東京全体が下がり始めた」と見ると、少し早い。

一方で、

「まだ上がっているから問題ない」

と考えるのも危険です。

正しくは、

高値圏の中で、物件ごとの差が広がり始めた

と見るべきでしょう。

3|なぜ価格が下がらないのか

理由はいくつかあります。

一つは、建築コストの高さです。

土地、人件費、資材価格が高止まりしているため、新築マンション価格を簡単には下げられません。

新築が高ければ、中古にも買い手が流れます。

もう一つは、

売り手が値下げを急ぐ必要がないこと。

低金利時代に住宅ローンを組んだ所有者は、必ずしも今すぐ売却する必要がありません。

そして現在の東京には、

富裕層

相続マネー

法人需要

国内外の投資家

といった、通常の住宅ローン利用者とは別の買い手も存在します。

さらに、価格を支えている大きな材料があります。

それが、

家賃です。

4|価格が止まっても、家賃はまだ上がっている

2026年7月の東京23区分譲マンション賃料は、1㎡あたり5,157円。

前月比0.8%上昇し、2カ月連続のプラスでした。

東京都全体でも4,963円/㎡となり、直近1年間の最高値を更新しています。

ここが不動産投資家にとって重要です。

価格が高くても、

賃料が伸びる物件なら収益改善の余地がある。

逆に、価格だけが高くなって家賃が上がらない物件は、投資としてどんどん厳しくなります。

これからは、

「去年より値上がりした」

よりも、

「去年よりいくら家賃を上げられたか」

を見る相場です。

5|今、一番危ないのは「暴落」ではない

不動産投資家が気にしがちなのは、

東京マンションはいつ暴落するのか

という話です。

ただ、現時点ではもう少し現実的なリスクを見るべきです。

それは、

キャッシュフローの悪化です。

例えば1億円で物件を取得して年間家賃が360万円なら、表面利回りは3.6%。

そこから、

管理費

修繕積立金

固定資産税

空室

管理委託費

借入金利

を引きます。

金利が上がれば、物件価格が1円も下がらなくても手残りは減ります。

だから今後は、

「価格が下がるか」ではなく、

「金利上昇後でも利益が残るか」

が重要になります。

6|東京だけではない。日本の不動産マネーはまだ強い

さらに興味深いのは、住宅市場に調整感が出る一方で、プロの不動産投資マネーは依然として活発なことです。

CBREによると、2026年第2四半期の国内事業用不動産投資額は1兆1,210億円。

前年同期比17%増で、第2四半期としては金融危機後初めて1兆円を超えました。

オフィスと物流施設への投資額は前年比2桁増。

東京のプライムオフィスとホテルでは、期待NOI利回りが過去最低を更新しています。

つまり、

「日本不動産から資金が逃げている」わけではありません。

むしろ、

資金は、より収益性と希少性の高い不動産へ集中している。

ここが重要です。

7|今の市場は「不動産全体」ではなく「選別相場」

ここまでの数字を並べると、今の日本不動産市場がよく見えます。

中古マンション成約件数

→ 減少

在庫

→ 増加

東京23区の価格

→ 高止まり

東京の家賃

→ 上昇

事業用不動産への投資資金

→ 活発

一見矛盾しているようですが、実は全部つながっています。

市場全体が弱いわけでも、

市場全体が強いわけでもない。

「買われる不動産」と「買われない不動産」の差が広がっている。

のです。

8|これから強い物件の条件

今後は、単純に「港区だから」「駅近だから」だけでは不十分になる可能性があります。

見るべきなのは、

賃料を上げられるか。

供給が限られているか。

実需があるか。

出口の買い手がいるか。

借入コスト上昇後でも利益が残るか。

です。

特に注意したいのは、

高値で買ったのに、賃料を上げられない物件。

です。

こうした物件は、相場が横ばいになるだけでも投資採算が悪化します。

逆に、

価格が高くても賃料を上げ続けられる物件は強い。

今後の東京市場では、

「坪単価」より「賃料単価」

を見る重要性がさらに高まるでしょう。

9|都心3区だから安全、でもない

東京カンテイによれば、2026年7月は都心部の中古マンション価格が3カ月連続で前月比マイナスとなりました。

これは港区・千代田区・中央区の価値がなくなったという話ではありません。

むしろ、

価格が上がりすぎたことで、買い手が選別を始めた

と考えた方が自然です。

不動産では、

良い場所を買うことと、

良い価格で買うことは別です。

どれほど一等地でも、

取得価格が高すぎれば投資利回りは悪くなります。

ここは今後、非常に重要なポイントになります。

Vertas Academyの視点

2026年9月時点の東京不動産市場を一言で表すなら、

「価格相場」から「収益相場」への転換点

ではないでしょうか。

これまでのように、

「東京なら上がる」

「都心なら間違いない」

だけでは判断できない市場になっています。

今後見るべきなのは、

価格 × 賃料 × 金利 × 在庫 × 出口

です。

不動産価格が上がらなくても、

賃料が伸びれば投資は成立します。

逆に、

価格が下がらなくても、

金利と経費が上がれば投資は失敗します。

最後に

東京では今、

売れていないのに、価格が下がらない。

ただし、この状態が永遠に続くとは限りません。

2026年7月時点では、

東京23区の成約件数は前年比17.2%減。

一方、成約㎡単価は2.7%上昇。

家賃も上昇しています。

この数字が示しているのは、

暴落でも、全面高でもありません。

「選別」です。

これからの不動産投資では、

東京を買うかどうかではなく、

東京の中で、何が10年後も選ばれるのか。

そこを見る必要があります。

次の不動産相場で差がつくのは、

一番高い物件を持っている投資家ではありません。

賃料が伸び、出口があり、金利上昇にも耐えられる物件を持っている投資家です。

それが、2026年9月現在の日本不動産市場を読むうえで最も重要なポイントです。

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