COLUMN 年率5%のデジタルドル。USDCは“新しい外貨預金”になれるのか
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いま、世界の金融で静かに大きな変化が起きています。
その中心にあるのが、ステーブルコインです。
ビットコインのように大きく値上がりすることを目的とした資産ではなく、米ドルや円などの法定通貨に連動するよう設計されたデジタル資産。なかでもUSDCは、2026年9月7日時点で流通額が743億ドルまで拡大しています。発行元のCircleによると、100%を現金や短期米国債などの流動性資産で裏付け、準備資産の一部はBNY Mellonが保管し、BlackRockが運用しています。
ただ、今回注目したいのはUSDCそのものの規模ではありません。
投資家にとって重要なのは、
「デジタルドルを保有しながら、利回りを得る」という選択肢が日本でも現実的になってきた
という点です。
その先頭を走っている企業の一つが、SBIグループです。
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SBI VCトレードでは現在、USDCを一定期間貸し出す「USDCレンディング」を提供しています。
通常時に想定されている利回りは年率5%程度。
期間は12週間で、保有しているUSDCをSBI VCトレードに貸し出し、その対価として利用料を受け取る仕組みです。SBI自身も、米ドル外貨預金との比較を前面に出しています。
ここで大切なのは、
USDCそのものに5%の金利が付いているわけではない
という点です。
これは預金金利ではなく、USDCをSBI VCトレードへ貸し出すことで得られるレンディング収益です。
したがって、銀行預金とはリスク構造が違います。
それでも、日本の投資家から見るとかなり興味深い。
例えば100万円相当をドル資産として持ちたいと考えたとき、
従来ならドル預金、米国債、外貨MMFなどが候補でした。
そこに今、
「USDCを保有してレンディングする」
という新しい選択肢が加わり始めています。
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そしてSBIの動きは、USDCだけではありません。
2026年6月にはRippleと組み、米ドル建てステーブルコインRLUSDの国内取り扱いを開始しました。
SBI VCトレードによれば、これは国内初となる「4号電子決済手段」としての取り扱いです。
さらに円建てでは、SBIグループが関わる信託型ステーブルコインJPYSCも展開。
SBI VCトレードでは現在、
USDC、RLUSD、JPYSC
というドル建て・円建て双方のステーブルコインを揃えています。
2026年8月時点では、USDCのレンディングが年率5%、JPYSCでは年率3%と案内されています。
これは単に「暗号資産の品揃えが増えた」という話ではありません。
SBIが狙っているのは、
円・ドル・デジタル資産を一つの金融圏の中で扱えるインフラ
だと考えた方が分かりやすいでしょう。
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そして、この流れは日本だけではありません。
世界に目を向けると、VisaとMastercardという決済の巨人まで本格的に動き始めています。
Visaは9月8日、ステーブルコイン連動型カードとオンチェーン融資を組み合わせる新たな仕組みを発表しました。
Visaによると、2020年以降、ステーブルコイン建てのオンチェーン融資は累計6940億ドル超に達しています。
さらにVisaのステーブルコイン決済額は、年率換算ベースで200億ドル超まで拡大し、前年の15倍以上。ステーブルコイン連動カードも世界で160以上のプログラムが稼働していると報じられています。
Mastercardも同じ方向です。
2026年6月、MastercardはUSDCだけでなく、PayPalのPYUSD、RippleのRLUSDなどを使った決済・清算への対応拡大を発表しました。
つまり、
VisaもMastercardも、
ステーブルコインを既存のカード網と競合する敵ではなく、自社ネットワークに組み込む新しい決済資産
として扱い始めています。
これは大きな変化です。
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さらに象徴的なのがPayPalです。
PayPalは自社のドル建てステーブルコインPYUSDを展開しています。
現在、対象ユーザーはPayPal上でPYUSDを保有すると年4%のリワードを得られます。また、2026年には利用地域を約70市場へ拡大しました。
そして米国の加盟店向けには、売上の一部をPYUSDで保有し、その残高から4%のリワードを得る仕組みまで導入されています。
ここまで来ると、ステーブルコインはもう、
「仮想通貨を売買するための中継通貨」
だけではありません。
給与、決済、送金、企業の資金管理、利回り運用。
従来銀行が担ってきた機能の一部に入り始めています。
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この市場で最も直接的な恩恵を受けている企業の一つが、USDCを発行するCircle Internet Groupです。
Circleの2026年第2四半期決算では、USDC流通額が前年同期比19%増の733億ドル。
四半期のオンチェーン取引額は14.8兆ドルと、前年同期比151%増加しました。
これは投資家にとって重要です。
Circleは単なる「暗号資産企業」というより、
デジタルドルが流通すればするほど収益機会が広がる金融インフラ企業
として見ることができます。
さらにStripeもステーブルコイン決済を拡大しています。
2026年はUSDT決済への対応、対応国の拡大、ステーブルコイン残高での決済などを進めています。
SBI、Circle、Ripple、Visa、Mastercard、PayPal、Stripe。
これだけの企業が同じ方向へ動いている。
ここに、ステーブルコインを単なる暗号資産ブームとして片づけられない理由があります。
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では、本当にUSDCは「新しい外貨預金」になれるのでしょうか。
答えは、
似ているが、同じものではない
です。
USDCを持つことで、経済的にはドルへのエクスポージャーを持つことになります。
その意味では外貨預金と似ています。
さらにレンディングを利用すれば年率5%前後の収益を狙える場合もあります。
しかしUSDCレンディングは預金ではありません。
銀行の預金保険制度の対象でもなく、貸出先の信用リスク、ステーブルコインの発行体リスク、ブロックチェーンの技術的リスク、そして円に戻す際の為替リスクがあります。
加えて利回りは固定ではありません。
SBIも市場環境によって変更や募集停止があり得ると明記しています。
つまり、
5%という数字だけを見て外貨預金より優れていると判断するのは危険です。
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そして今、もう一つ重要なのが為替です。
9月10日現在、ドル円は約153円台。
円は9月に入って急速に上昇しており、米ドルに対して約4%上昇しています。
USDCを日本円から買うということは、
実質的にはドル資産を持つことでもあります。
仮にUSDCレンディングで5%取れても、円高が10%進めば円換算では損失になり得ます。
したがって投資家が見るべきなのは、
「5%もらえるか」ではなく、
金利+為替+信用リスクを合わせた総合リターン
です。
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それでも、この市場を無視する理由はありません。
むしろ今後5年、10年を見るなら、
ステーブルコインは「投資対象」というより、
金融インフラそのものへ近づいていく可能性があります。
銀行口座でドルを持つ。
証券口座で米国債を持つ。
PayPalでPYUSDを持つ。
SBIでUSDCを持つ。
そしてブロックチェーン上で24時間365日、送金・決済・運用する。
これまで別々だった金融サービスが、一つにつながり始めています。
2025年に米国で成立したGENIUS Actを含め、規制環境もステーブルコインを既存金融へ組み込む方向へ進んでいます。
だから、投資家が見るべき本当のテーマは、
「USDCを買うべきか」ではありません。
「デジタルドルが普及した時、誰が最も儲かるのか。」
Circleなのか。
SBIなのか。
Rippleなのか。
VisaやMastercardなのか。
あるいは、まだ市場が十分評価していない別の企業なのか。
ステーブルコイン市場の本当の投資機会は、むしろそこにあります。
銀行預金が消えるわけではありません。
ただ、その隣に、
24時間動き、世界中へ送れ、決済にも使え、運用までできる“デジタルドル”
という新しい金融資産が並び始めた。
2026年は、その変化が日本の個人投資家にも見え始めた年になるかもしれません。
USDCは“新しい外貨預金”になるのか。
その答えはまだ出ていません。
しかし、大手金融機関と決済企業の動きを見る限り、
「ステーブルコインが金融の一部になるのか」という議論の段階は、すでに終わりつつあります。
次に問われるのは、
「どれだけ大きな金融市場になるのか」
です。

