MARKET INSIGHTS 特殊ガス市場に追い風?
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セントラル硝子の上方修正から読み解く関連5社
セントラル硝子の上方修正から読み解く関連5社生成AIやデータセンターへの投資が続くなか、半導体市場で注目される領域はGPUや製造装置だけではなくなってきた。その製造工程を支えるガスや薬液、高純度材料など、いわば「工場を動かすための材料」へも視線が広がっています。
その流れを考えるうえで、今回ひとつの手掛かりとなったのがセントラル硝子(4044)の業績予想の上方修正でした。
同社は2026年8月、中間期の売上高予想を750億円から790億円へ、営業利益予想を40億円から62億円へ引き上げている。売上高の増額率は約5.3%なのに対し、営業利益は55.0%の上方修正。売上の伸び以上に、利益の改善幅が大きいことが目を引きます。
ここから「特殊ガス関連にも追い風が広がっているのではないか」という連想が生まれる。ただし、今回の数字をそのまま半導体需要の急拡大と結びつけるのは少し早い。
会社側が説明している要因のひとつは、一部特殊ガス製品における原材料価格上昇を受けた価格適正化。販売数量そのものが増えたのか、販売価格の引き上げによって採算が改善したのかによって、数字の意味は変わってくる。
そこで今回はセントラル硝子を起点に、特殊ガスとの事業上の距離が比較的近い国内5社を取り上げていきます。それぞれがどこで収益を生み、次の決算で何を確認すればいいのか。数字の背景まで含めて整理していきます。
1|セントラル硝子(4044)
売上以上に伸びる利益、その中身を見る
今回の業績予想修正でまず目を引くのが、売上高と営業利益の伸び方の違いになる。
中間期の売上高予想は750億円から790億円へ引き上げられた。一方、営業利益は40億円から62億円へ上方修正されている。
売上高では40億円の増額に対し、営業利益は22億円の増額。単純に販売規模が拡大しただけではなく、採算面の改善が大きく寄与している可能性が見えてくる。
その背景として会社側が挙げているのが、一部特殊ガス製品の価格適正化だった。
さらに電子材料の中間期営業利益予想も、32億円から41億円へ引き上げられている。
一方で、同じ化成品のなかでもすべてが同じ方向へ動いているわけではない。エネルギー材料については、8億円の赤字予想から19億円の赤字予想へ悪化する見通しとなりました。
電子材料では利益改善が進む一方、エネルギー材料では赤字が拡大する。同じ会社の化成品事業でも、収益環境にはかなりの差が生まれていることになります。
だからこそ、「化成品が好調」「半導体材料が伸びている」とまとめてしまうのではなく、どの製品が利益を押し上げ、どの事業が足を引っ張っているのかまで分けて見ることが重要になります。
次に確認したいのは、特殊ガスの利益改善を支えているのが価格なのか、数量なのかという点になる。
価格適正化による効果が中心なら、原材料価格や価格転嫁の継続性が今後の焦点になる。一方、販売数量も伸びているのであれば、半導体工場の稼働率上昇や需要回復が数字に表れ始めている可能性も出てきます。
次回以降の決算では、電子材料の営業利益が実際にどこまで伸びたのかに加え、特殊ガスの販売数量や単価について会社側の説明がどこまで具体化するかを見ておきたい。
https://s.minkabu.jp/stock/4044
2|日本酸素ホールディングス(4091)
半導体工場を動かし続けるガス供給
特殊ガスというテーマから次に見ておきたいのが、日本酸素ホールディングス(4091)になる。
同社は酸素、窒素、アルゴンなどの産業ガスを、日本だけでなく米国、欧州、アジア・オセアニアなど世界各地で供給している。半導体分野でも高純度ガスや関連設備を手掛けており、工場の稼働を支える企業のひとつに位置づけられています。
特徴的なのは、単にガスを販売するだけではなく、顧客工場に供給設備を設け、継続的にガスを届けるビジネスを持っていること。
半導体工場では、生産を続ける限りさまざまなガスが必要になる。工場が新設され、その後稼働率が高まっていけば、設備販売とは異なる形で継続需要につながる可能性があります。
ただし、セントラル硝子の上方修正をそのまま日本酸素HDへ当てはめることはできない。
同社の顧客は半導体だけに限らず、鉄鋼、化学、医療、食品など幅広い。さらに世界各地で事業を展開しているため、地域ごとの需要に加えて、電力価格や物流費、為替なども収益を左右します。
半導体関連を見るのであれば、全社の売上高だけではなく、半導体向け供給設備の新規稼働やガス販売量の変化まで追う必要がある。
加えて、エネルギーコストの上昇を販売価格へどこまで反映できているかも重要になります。数量が伸びてもコスト負担がそれ以上に増えれば、利益には残りにくいからです。
特殊ガス市場の広がりを見るうえで、日本酸素HDは材料そのものだけではなく、半導体工場がどれだけ動いているのかを供給インフラ側から見る存在として注目しておきたい。
https://s.minkabu.jp/stock/4091
3|エア・ウォーター(4088)
全社の数字ではなく、半導体関連を切り分ける
産業ガス大手の一角を占めるエア・ウォーター(4088)も、特殊ガスを考えるうえで確認しておきたい企業になる。
同社は産業ガスを基盤としながら、現在では医療、農業・食品、エネルギー、物流、ケミカルなど幅広い事業を展開しています。半導体工場向けにもガスや関連材料、設備を提供しており、半導体の製造現場との接点を持っている。
ただ、ここで注意したいのが事業領域の広さになります。
エア・ウォーターの場合、全社の売上高や利益が伸びていても、それだけでは半導体関連が好調なのか判断しにくい。医療や食品など、まったく異なる事業の伸びによって全社業績が押し上げられることもあります。
特殊ガスというテーマから見るのであれば、注目したいのは半導体関連を含むデジタル&インダストリー領域。
ガスの販売量が増えているのか、半導体向け材料や設備が伸びているのか、価格転嫁によって採算が改善しているのか。それぞれを分けて確認することで、半導体市場との接点が見えやすくなります。
さらに設備投資にも目を向けたい。需要を見込んで設備を増強しても、稼働が想定より遅れれば減価償却費などが先に発生します。設備を作ったという事実だけではなく、その設備が実際に稼働し、利益へつながっているかまで見る必要がある。
エア・ウォーターの場合、「特殊ガス関連」というテーマだけで全社を評価するよりも、大きな事業ポートフォリオのなかから半導体関連の数字を切り出して見ることがポイントになりそうだ。
https://s.minkabu.jp/stock/4088
4|高圧ガス工業(4097)
ガス需要とともに、物流の採算を見る
高圧ガス工業(4097)は、酸素や窒素、溶解アセチレンなどの産業ガスに加え、接着剤や塗料関連などの化成品も手掛けている。
同社を見るうえで特徴となるのが、ガスそのものだけではなく、地域の製造業へ安定して届ける供給網を持っていることになります。
産業ガスでは、製造したガスを顧客へ届ければ終わりというわけではない。ボンベなどの容器を管理し、安全性を確保しながら必要なタイミングで配送する必要があります。
そのため、販売数量が増えたからといって、そのまま利益が増えるとは限らない。
配送回数が増えれば物流費や人件費が膨らみ、容器への投資や保安コストも必要になる。売上高が伸びていても、その裏側でコストがどの程度増えているのかまで確認したいところになる。
また、セントラル硝子が扱う半導体向け特殊ガスと、高圧ガス工業の製品構成や顧客層は同じではありません。
セントラル硝子で価格適正化が進んだからといって、同じ価格環境が高圧ガス工業にも広がっているとは限らないため、同社自身の販売単価や数量を見る必要がある。
注目したいのは、販売数量、販売単価、物流費、容器関連コスト、そして利益率の組み合わせになります。
数量が伸びながら利益率も改善しているのであれば、需要増を収益へつなげられている可能性が高まります。一方、売上だけが増えて利益率が低下している場合には、物流費や原材料費の上昇が重荷になっている可能性も考えられる。
ガス需要を見るだけでなく、それを届けるためのコストまで含めて考える必要がある企業といえる。
https://s.minkabu.jp/stock/4097
5|岩谷産業(8088)
ガスだけではなく、設備や商流まで見る
LPガスや水素のイメージが強い岩谷産業(8088)だが、産業ガスや特殊ガス、関連設備なども幅広く手掛けており、半導体産業との接点を持っている。
同社の特徴は、ガスそのものだけではなく、商流や設備まで含めて事業を展開しているところにあります。
半導体工場の新設や増設が進めば、ガスの供給だけでなく、関連設備や機械など複数の領域で事業機会が生まれる可能性があります。
一方、岩谷産業の全社業績にはLPガスや水素、資源価格、為替なども影響するため、売上高だけから特殊ガスの状況を判断するのは難しい。
特に商社機能を持つ企業では、原材料価格の上昇によって仕入れ価格と販売価格の双方が上がり、数量が変わっていなくても売上高が膨らむことがある。
そこで重要になるのが、売上の大きさよりもどれだけ利益が残っているかという視点です。
産業ガス・機械分野の採算が改善しているのか。半導体工場向けの設備案件が増えているのか。さらに設備を納入した後、ガスの継続供給へつながっているのか。
こうした流れまで確認できれば、一時的な設備販売だけなのか、その後も収益が続くビジネスなのかが見えやすくなります。
特殊ガス市場を考える際、岩谷産業はガスの販売だけでは捉えきれない、設備と商流を含めた広がりを見る企業として位置づけられそうだ。
https://s.minkabu.jp/stock/8088
同じ「ガス関連」でも、利益が生まれる場所は違う
ここまで5社を見てくると、同じガス関連企業でも、収益の生まれ方にはかなりの違いがあることが分かります。
セントラル硝子では、特殊ガスや電子材料そのものの価格や販売量が業績を見るうえで重要になる。
日本酸素HDでは、ガスの販売に加えて工場への継続供給というインフラ型の収益がポイントになります。
エア・ウォーターでは、幅広い事業のなかから半導体関連部分を切り分けなければならない。
高圧ガス工業では、ガスの販売だけでなく物流や容器管理を含めた採算が重要になります。
そして岩谷産業では、ガスに加えて設備や商流まで含めた収益構造を見る必要がある。
同じ「特殊ガス関連」という言葉でまとめられていても、利益が増える条件はそれぞれ異なるということになります。
だからこそ、テーマの名前だけで企業を並べるのではなく、各社がどこで利益を生み出しているのかまで一段深く見ることが重要になってきます。
「値上げ」と「需要増」を分けて考える
今回のセントラル硝子の上方修正を読み解くうえで、特に重要なのが値上げによる増収と、需要増による増収を混同しないことになる。
売上高や利益が増えていても、必ずしも販売数量が増えているとは限りません。
原材料価格の上昇を販売価格へ転嫁すれば、数量が変わらなくても売上高は増える。さらに価格転嫁が進み、原材料コストを十分に吸収できれば、利益率が改善することもあります。
一方、半導体工場の稼働率が上昇し、特殊ガスの使用量そのものが増えているのであれば、意味合いは変わってきます。
数量の増加が続けば、生産能力の増強や新たな供給設備への投資につながり、より長い需要サイクルへ発展する可能性も出てくる。
つまり、同じ増収でも「価格が上がった」のか、「数量が増えた」のかによって、その先を見るためのポイントが違ってきます。
今後の決算では、販売数量、販売単価、原材料価格、利益率、設備投資などを切り分けながら確認していきたい。
特殊ガスは、半導体工場を動かすための重要な材料
AI半導体市場では、GPUや半導体製造装置が注目の中心になりやすい。
ただ、実際に半導体を作るためには製造装置だけでは足りません。ガスや薬液、超純水、空調など、工場を動かし続けるためのさまざまな材料やインフラが必要になります。
特殊ガスもそのひとつになる。
さらに半導体の微細化や高性能化が進むほど、材料に求められる純度や品質管理の水準も高くなります。単に製造できることだけではなく、高い品質を維持しながら安定供給できることが競争力につながっていきます。
生成AIを起点とした半導体投資が続くなか、製造装置だけでなく、その装置を動かすために何が必要なのかまで視野を広げることで、これまでとは違った企業群が見えてきます。
特殊ガスは、その流れを追ううえで押さえておきたい領域のひとつになりそうだ。
まとめ
セントラル硝子は2026年8月、中間期の売上高予想を750億円から790億円へ、営業利益予想を40億円から62億円へ引き上げました。
売上高の増額率が約5.3%なのに対し、営業利益は55.0%の上方修正。利益面での改善の大きさが今回の数字の特徴になる。
ただし、その背景には一部特殊ガス製品の価格適正化が含まれているため、今回の上方修正だけを根拠に「半導体向け特殊ガスの販売数量が急増している」と結論づけることはできません。
日本酸素HD、エア・ウォーター、高圧ガス工業、岩谷産業についても、ガス市場との接点はありながら、顧客、供給方法、契約形態、コスト構造にはそれぞれ違いがあります。
次に見たいのは、「特殊ガス関連」というテーマそのものではなく、各社の数字の中身になる。
販売数量は増えているのか。価格は上がっているのか。原材料コストを吸収できているのか。そして最終的に利益やキャッシュフローへつながっているのか。
そこまで追っていくことで、セントラル硝子から始まった特殊ガスへの注目が、一社だけの動きなのか、それとも周辺企業にも広がる変化なのかが少しずつ見えてくるはずです。

