MARKET INSIGHTS 原発再稼働の裏で“廃炉市場”も動く。福島発・ビーエイブル(604A)が握る原子力ロボットの成長余地
8分で読める
原発関連株と聞くと、多くの投資家は「再稼働」や「電力不足」を思い浮かべます。
しかし、いま別の場所で静かに巨大な市場が動いています。
それが、廃炉です。
そして、その最前線で事業を展開しているのが、福島県大熊町に本社を置くビーエイブル、証券コード604Aです。
同社は2026年7月29日に東証スタンダード市場へ上場したばかりの企業ですが、足元ではIPOという枠を超え、業績面からも注目を集め始めています。会社の主力は、福島第一原子力発電所を中心とする廃炉・原子力関連工事です。施工計画、建設、保守だけではなく、人が容易に立ち入れない場所で使う遠隔操作ロボットの開発・運用まで行っています。
決算で状況が一変した
株価を大きく動かしたのが、9月14日に発表された2026年7月期決算です。
2026年7月期の売上高は99億800万円、前期比10.3%増。営業利益は10億900万円、50.4%増となりました。特に利益の伸びが売上の伸びを大きく上回っている点が重要です。
さらに会社側は2027年7月期について、売上高118億4900万円、19.6%増、営業利益14億1800万円、40.5%増を予想しています。営業利益は2期連続で大幅増益となり、売上高・営業利益とも過去最高更新を見込んでいます。
数字だけを見ると、2025年7月期に6億7100万円だった営業利益は、2026年7月期に10億900万円、そして2027年7月期予想では14億1800万円です。
つまりわずか2年間で、営業利益は約2.1倍になる計算です。
この利益成長の背景について会社側は、福島第一原発向けの廃炉関連工事について、受注と工事進捗が堅調だったことを挙げています。
ここがビーエイブルを見るうえで一つのポイントです。
単なる「将来期待のロボット株」ではありません。
すでに廃炉関連の需要が、実際の売上と利益に反映され始めています。
株価は決算翌日にストップ高
市場の反応も鮮明でした。
決算翌日の9月15日、ビーエイブルは前日比300円高の1,565円、ストップ高で取引を終了しました。
そして本日9月16日も買いが続き、一時1,695円まで上昇しています。株探の9時47分時点では1,617円、前日比3.32%高となっており、今週の高値は1,695円まで切り上がっています。
7月末の上場以降を見ると、8月6日には872円まで下落していました。
そこから本日の高値1,695円までで考えると、約1か月余りで株価はほぼ2倍になったことになります。
ただし、ここで重要なのは「株価が上がった」という事実だけではありません。
今回の上昇には、
IPO
→ 廃炉
→ 原子力
→ ロボット
→ 大幅増益
という複数のテーマが重なっています。
これがいま市場でビーエイブルが注目されている理由です。
なぜ廃炉にロボットが必要なのか
福島第一原発の廃炉では、人が直接作業できない場所が数多く存在します。
そのため、遠隔操作技術やロボット技術が極めて重要になります。
ビーエイブルは実際に、原発施設内で稼働する遠隔操作ロボットや、サンプピット排水業務向けロボットなどを手掛けています。
さらに、アンカーボルト打設を支援する遠隔操作ロボットも開発しており、壁面の鉄筋探査から削孔まで遠隔で行える技術を実用化しています。
つまり同社の技術は、「ロボットを売る」というより、
人間が入れない現場を、機械で施工可能にする
ことに価値があります。
この違いは重要です。
一般的なサービスロボットとは違い、原子力施設で求められるのは、高放射線環境、狭所、複雑な設備、遠隔操作など、非常に高い技術要件です。
そこで実績を積めれば、新規参入が簡単ではない市場になる可能性があります。
「原発ロボット会社」だけではない
ビーエイブルの研究開発を見ると、さらに興味深い部分があります。
同社は日本版GPSとも呼ばれる準天頂衛星「みちびき」を使い、センチメートル級の位置情報を利用した自動走行システムを開発しています。
またROSを活用し、自己位置推定、地図生成、障害物検知、経路計画などを行う自律走行ロボットにも取り組んでいます。
さらに、人が入れない狭いダクト内部を走行する「磁石点検ロボット」も開発しています。
磁石で壁面に吸着し、垂直方向にも移動しながらカメラで内部を点検する仕組みです。
ここから見えてくるのは、ビーエイブルの技術が将来的に、
原子力発電所だけでなく、
発電所、
化学プラント、
製鉄所、
インフラ設備、
災害現場、
などへ広がる可能性です。
会社自身も原子力以外に石油化学、製薬、家電、製鉄などのプラント設備建設・メンテナンスを行っています。
つまり投資家の視点では、
「廃炉企業」から「特殊環境ロボティクス企業」へ変わる余地があるのか
が中長期の焦点になります。
福島という立地そのものが強みになる可能性
ビーエイブルの本社は福島県双葉郡大熊町。
福島第一原発が立地する地域です。
この立地は単なる所在地ではありません。
廃炉という長期プロジェクトの近くで、
現場施工、
ロボット運用、
技術開発、
原子力関連人材、
を蓄積できることは、同社にとって競争上の意味を持つ可能性があります。
日本の原子力政策を語るとき、市場ではどうしても再稼働ばかりに注目が集まります。
しかし再稼働する原発がある一方で、役割を終えた原発では廃炉作業が何十年単位で続きます。
つまり原子力産業には、
「発電する市場」と「閉じる市場」の両方が存在する。
ビーエイブルは後者に深く関わる企業です。
注目すべきは利益率
もう一つ見逃せない数字があります。
2025年7月期の営業利益率は約7.5%でした。
2026年7月期は約10.2%。
そして2027年7月期の会社予想では約12.0%まで上昇します。
売上高だけでなく、利益率そのものが改善しているわけです。
投資家が今後確認したいのは、
「売上が増えているか」
だけではありません。
廃炉関連工事が増えることで、本当に利益率が継続的に上昇するのか。
ここが企業価値を左右するポイントになります。
ただし、上昇後だからこそリスクも見る
現在のビーエイブルには強い材料がありますが、株価は短期間で急上昇しています。
9月15日時点でPERは約16.9倍、PBRは約2.14倍でした。
決算発表前の9月11日終値は1,175円。
その後ストップ高を挟み、本日一時1,695円まで上昇しました。
短期間で大きく上昇した銘柄では、利益確定売りによる値動きの拡大には注意が必要です。
また事業面でも、廃炉関連工事への依存度、案件の進捗時期、原価、人員確保などによって業績が変動する可能性があります。
「廃炉ロボット」というテーマだけを見るのではなく、
受注高
受注残高
営業利益率
ロボット事業の売上寄与
原子力以外への展開
を追うことが重要です。
投資家が見るべき本質
ビーエイブルの面白さは、ロボットそのものではありません。
「廃炉」という長期インフラ需要の中で、ロボット技術を持った施工会社であること。
ここにあります。
現在の業績成長は福島第一原発関連工事が中心です。
しかし、
遠隔操作、
自律走行、
衛星測位、
点検ロボット、
といった技術が他産業へ展開できるようになれば、企業の評価軸は変わってきます。
「福島の廃炉工事会社」から、
「人が働けない場所をロボットで施工する会社」へ。
ビーエイブルがそこまで進化できるのか。
株価が急騰したいまだからこそ、次に見るべきなのは株価そのものではなく、2027年7月期に会社計画の営業利益14億1800万円を達成できるか、そしてその先にロボティクス事業をどこまで広げられるかです。
この2点が確認できれば、ビーエイブルを見る市場の目線は、「IPOの短期人気株」から、廃炉・原子力インフラ×ロボティクスの成長企業へ変わっていく可能性があります。
Vertas Academy MARKET INSIGHT
原発再稼働だけでは見えない、もう一つの原子力市場。
その最前線に、604A ビーエイブルがあります。

