金利上昇+株主還元の「二重取り」――いま注目したい銀行株5選

長く続いた「金利のない日本」が、明確に変わり始めています。

日本銀行は9月18日の金融政策決定会合で政策金利を1.25%へ引き上げることを決定しました。1.25%は31年ぶりの高水準です。決定は7対2で、金融正常化がさらに一段進んだ形となりました。

この変化によって、株式市場で改めて存在感を増しているのが銀行株です。

銀行は預金などで集めた資金を企業や個人へ貸し出し、その金利差を収益の一つにしています。そのため、長期間にわたる超低金利は銀行にとって厳しい環境でした。

ところが政策金利が上がることで、貸出金利や保有資産の運用利回りが上昇し、資金利益を伸ばしやすい環境へ変わってきています。

しかも現在の銀行株には、もう一つの大きなテーマがあります。

それが、増配と自己株買いを中心とした株主還元の拡大です。

つまり現在の銀行株は、

金利上昇による利益成長

+

配当・自己株買いによる株主還元

という二つの材料が同時に走っているのです。

今回は、三菱UFJ、三井住友、みずほ、りそな、しずおかFGの5社を比較します。

なぜ「日銀1.25%」が銀行の追い風になるのか

銀行を見るうえで重要なのが利ざやです。

銀行は預金者に支払う金利より高い金利で企業や個人に融資し、その差額を利益にしています。

超低金利の時代には、この差が極端に小さくなっていました。

しかし金利が正常化すると、住宅ローン、企業向け融資などの貸出金利が上昇します。預金金利も上昇しますが、貸出側の金利上昇が収益拡大につながれば、銀行の資金利益には追い風となります。

実際、しずおかFGは8月の業績上方修正で、貸出金平均残高の増加とともに日銀の政策金利引き上げによる資金利益改善を理由として挙げています。

みずほも2026年度第1四半期について、円金利上昇の効果などにより連結粗利益+ETF関係損益等が前年同期比39.1%増、連結業務純益+ETF関係損益等が81.9%増となりました。

金利正常化が、すでに銀行の決算数字へ表れ始めているということです。

① 三菱UFJ FG〈8306〉

2.7兆円利益を狙う国内最大級の銀行グループ

三菱UFJの9月18日終値は3,620円。

会社予想の年間配当は96円で、予想配当利回りは2.65%。PBRは1.80倍です。

注目すべきは利益規模です。

2027年3月期の親会社株主純利益目標は2兆7,000億円。前期実績2兆4,272億円から10%超の利益成長を目指します。ROE目標も12%程度に設定しています。

株主還元も強力です。

2026年5月18日から6月25日までに、

31,967,100株、約1,000億円

の自己株式を取得しました。会社は下期についても、利益進捗や市場環境などを踏まえて追加還元を検討する方針です。

MUFGの特徴は、日本の金利上昇だけに依存しないこと。

国内銀行業務に加えて、海外、証券、資産運用など収益源が幅広く、金利正常化の恩恵を受けながらグループ全体で利益成長を狙える点がポイントです。

② 三井住友FG〈8316〉

「毎期増配+自己株買い」が明確

三井住友FGの株価は6,830円。

年間配当予想は180円、予想配当利回りは2.64%、PBRは1.61倍です。

2027年3月期の親会社株主純利益目標は1兆7,000億円。

そしてSMFGの魅力を説明するうえで外せないのが、株主還元方針です。

会社は配当性向40%+毎期増配にコミットしており、今期の180円配当は前年度から23円の増配予定。

さらに2026年5月には、まず1,800億円の自己株取得枠を設定しました。

しかも会社側は、業績の進捗や資本状況を見ながら追加取得も検討すると明記しています。

「利益成長を配当と自己株買いで株主へ返す」という方針が非常に分かりやすい銀行です。

③ みずほFG〈8411〉

利益1.3兆円へ。自己株買いは2,000億円

みずほFGの株価は8,495円。

年間配当予想150円、予想配当利回り1.77%、PBRは1.80倍です。

2027年3月期は、

連結業務純益1兆6,300億円

親会社株主純利益1兆3,000億円

を目標としています。

そして今回の5社比較で非常に目立つのが自己株買いです。

みずほは5月15日に1,000億円、さらに7月30日に1,000億円の自己株式取得を決議。

合計上限は2,000億円です。

しかも取得株は全株消却予定としています。

自己株を消却すれば発行済み株式数が減少するため、利益が同じでも1株当たり利益、つまりEPSを押し上げる効果が期待できます。

みずほは単なる「高配当銀行株」というより、

利益成長+自己株買いによるEPS上昇

を見る銘柄になってきています。

④ りそなHD〈8308〉

国内金利上昇を比較的ストレートに受ける

りそなHDの株価は2,451.5円。

予想配当利回りは1.51%、PBRは1.83倍です。

今期の親会社株主純利益目標は3,300億円。

前期比では713億円の増益を計画しています。

さらに株主還元も積極的です。

2026年5月13日から8月4日にかけて約350億円の自己株式を取得。

そのうえで7月31日には、さらに上限500億円の取得枠を設定しました。

年間配当も前期から8円増配し、37円を予想しています。

りそなの面白さは、メガバンクより国内事業のウエートが高いことです。

そのため、「日本の金利が上がる」というテーマを比較的ストレートに捉えやすい銀行株として注目されます。

⑤ しずおかFG〈5831〉

PBR1.45倍、利回り3%超。地銀にも金利上昇の波

最後は、しずおかフィナンシャルグループです。

株価は3,489円。

年間配当予想は108円で、予想配当利回りは3.10%。

今回の5社では最も高い配当利回りとなっています。

一方、PBRは1.45倍と5社の中で低い水準です。

8月6日には今期業績を上方修正。

親会社株主純利益予想を従来の1,050億円から1,150億円へ引き上げました。

年間配当も98円から108円へ増額しています。

さらに自己株買いでは上限300億円を設定。

実際には9月9日までに約299億9,994万円、871万2,800株を取得し、予定していた自己株買いを完了しました。

メガバンクだけでなく地方銀行にも、金利正常化による利益拡大と株主還元強化の流れが広がっていることを象徴する一社です。

「金利上昇+株主還元」が銀行株を変える

今回の5社を見ると、銀行株の投資テーマが以前とは変わっていることが分かります。

かつて銀行株といえば、

「成長率は低いが、株価が安く、配当がある」

というイメージが強いセクターでした。

しかし今は違います。

MUFGは純利益2.7兆円を目指し、SMFGは1.7兆円、みずほは1.3兆円。

その利益を企業内に積み上げるだけではなく、増配や大規模な自己株買いによって株主へ還元しています。

つまり銀行株を見るポイントは、

「PBRが低いから買う」から、「ROEとEPSをどこまで伸ばせるかを見る」へ変化している

ということです。

ただし「利上げ=銀行株は必ず上がる」ではない

注意も必要です。

金利上昇は銀行にとって基本的には追い風ですが、金利が急激に上がれば預金金利の引き上げ競争も起こります。

また、債券価格の下落による評価損、企業の借入負担増加による信用コスト上昇、住宅ローン需要の減速などは逆風になり得ます。

さらに銀行株はすでに大きく上昇しています。

PBRを見ると、

MUFG 1.80倍

SMFG 1.61倍

みずほ 1.80倍

りそな 1.83倍

しずおかFG 1.45倍

となっており、「銀行だからPBR1倍割れ」という時代ではありません。

だからこそ今後は、単なる金利上昇期待だけではなく、

純利益が本当に伸びているか

ROEが改善しているか

配当を増やせるか

自己株買いを継続できるか

この4点を見ることが重要になります。

まとめ――銀行株は「金利株」から「利益成長+還元株」へ

日銀が1.25%への利上げを決めたことで、日本の銀行を取り巻く環境は大きく変わりました。

今回の5社にはそれぞれ違った特徴があります。

MUFGは2.7兆円という利益規模。

SMFGは毎期増配と1,800億円の自己株買い。

みずほは2,000億円の自己株取得と全株消却。

りそなは国内金利上昇との結び付きと積極還元。

しずおかFGは3%を超える予想配当利回りと業績上方修正。

共通しているのは、金利上昇によって銀行本来の収益力が改善する局面で、同時に株主還元も強化していることです。

今の銀行株を見るキーワードは、単なる「利上げ恩恵」ではありません。

「金利上昇で稼ぐ力が増え、その利益を配当と自己株買いで株主へ返せるか」

ここが、日銀1.25%時代の銀行株を見る最も重要なポイントになりそうです。

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