「BAKUNEを売る会社」。

TENTIALに対して、そんなイメージを持つ投資家はまだ多いかもしれません。

確かに、現在のTENTIALをここまで成長させた最大の原動力は、疲労回復パジャマ「BAKUNE」です。2026年6月にはシリーズ累計販売数が200万セットを突破。数年前までニッチだったリカバリーウェアというカテゴリーを、一般消費者にも知られる市場へ押し上げてきました。

しかし、いま投資家が見るべきポイントは、BAKUNEそのものの売れ行きだけではありません。

むしろ重要なのは、

「BAKUNEによって獲得したブランド力と顧客基盤を使い、次に何を売るのか」

という点です。

TENTIALはいま、リカバリーウェア企業から、睡眠・休養・日常生活全体をカバーする“コンディショニング企業”へ変わろうとしています。

ここに、TENTIALの「第2の成長曲線」があります。

まず、数字はまだ強い

2026年8月期第3四半期累計の売上高は245億6,600万円、営業利益は26億9,100万円。

前年同期との参考比較では、売上高が82.9%増、営業利益が50.5%増となりました。

さらに3月から5月までの第3四半期だけを切り取ると、売上高は80億9,400万円。前年同期比で89.0%増です。

一方、営業利益は5億200万円で前年同期比9.4%減となりました。

一見すると「利益成長が止まった」とも見えます。

しかし、その中身を見る必要があります。

TENTIALはこの期間、WBC関連の協賛・マーケティングやテレビCMなど、将来のブランド価値を高めるための投資を大きく増やしました。ブランド投資・研究開発費は前年同期の2億8,100万円から13億900万円まで拡大しています。

つまり、売上が失速して利益が減ったというより、利益を使って次の成長を取りにいった四半期と見る方が実態に近いでしょう。

会社の2026年8月期通期予想は、売上高330億8,100万円、営業利益38億400万円。

この予想自体も4月に上方修正されています。

「BAKUNE一本足」から変化が始まっている

ここからが、今回最も重要なポイントです。

TENTIALの第3四半期資料を見ると、リカバリーウェア以外のカテゴリーが明確に伸び始めています。

前年同期比で、寝具は約2.3倍、WORKカテゴリーは約2.6倍、FOOTカテゴリーは約1.6倍。

特に寝具は、売上構成比が初めて10%を突破しました。

この変化はかなり重要です。

BAKUNEを買った人が、

パジャマだけで終わるのではなく、

枕を買う。

掛け布団を買う。

インナーを買う。

サンダルを買う。

という形で、TENTIALブランドの中を横に移動し始めているからです。

現在の公式オンラインストアを見ると、リカバリーウェアだけでなく、寝具、スリープアクセサリー、入浴剤、アロマ、機能性インナー、リラックスウェア、サンダル、インソールまで商品領域はかなり広がっています。

これは単なるSKUの増加ではありません。

TENTIALが目指しているのは、「寝る時だけ使うブランド」から「24時間コンディションを整えるブランド」への拡張と考えられます。

第2の成長曲線の本命は「睡眠」

では、BAKUNEの次の柱は何なのでしょうか。

経営陣のIRセミナーでの説明を見ると、方向性はかなり明確です。

まず大きく伸ばそうとしているのが、睡眠領域です。

BAKUNEを入口として、寝具や家の中で使うリラックス商品を増やし、そこからインナーや普段着へ展開していく考えが示されています。

経営陣は睡眠領域だけでも、将来的に500億円から600億円程度の売上規模を狙える市場との認識も示しています。

実際、その布石はすでに始まっています。

今年は「BAKUNE 掛け布団 クール」のテレビCMを開始し、掛け布団専門のPOPUPも展開。さらにキッズ向け睡眠シリーズ、高価格帯の「BAKUNE Premium シルク」など、顧客層と価格帯の両方を広げています。

つまり、

BAKUNEをもっと売る

だけではなく、

BAKUNEで獲得した顧客に「睡眠そのもの」を売る。

ここが第2ステージです。

「商品会社」から「ブランド会社」へ

もう一つ見逃せない数字があります。

TENTIALの自社ECにおける既存顧客売上は、第3四半期に前年同期比70.6%増。

会社側は、1人の顧客が時間とともに購入する累計金額、つまりLTVも上昇していると説明しています。

これは成長企業を見るうえで非常に重要です。

毎年広告費を使って新しい顧客を取り続けなければ売上が伸びない会社と、一度顧客を獲得すると別の商品まで買ってもらえる会社では、長期的な収益構造がまったく違います。

そしてTENTIALはECだけにも依存していません。

第3四半期時点で直営店舗は20店舗まで増加。ECが主力でありながら、直営店や卸売の成長率が高くなっています。

さらに、ANA国際線ファーストクラスでのBAKUNE提供、ホテルやスパへの導入、侍ジャパンとのパートナーシップ、スタンフォード大学野球部とのコンディショニングサポートなど、単純な物販以外の場所でもブランド接点を増やしています。

こうした取り組みの目的は、広告を見て商品を買ってもらうだけではなく、

「コンディショニングといえばTENTIAL」

というブランドポジションを作ることにあるのでしょう。

さらにその先には「ヘルスケア」がある

そして最近の動きで特に注目したいのが、研究・医療領域です。

TENTIALは6月30日、東京科学大学のGENTEN Research Centerとの共同研究の検討に向けたMOUを締結。

翌7月には、日本医療機器工業会と海外医療機器技術協力会、OMETAにも加盟しました。

これは、すぐに医療事業が大きな売上になるという話ではありません。

ただしTENTIALが今後、ファッション性だけで競争するのではなく、

「科学的根拠×コンディショニング」

をブランドの参入障壁にしようとしていることは読み取れます。

リカバリーウェア市場に競合が増えているからこそ、この差別化は重要になります。

もちろん最大のリスクもBAKUNE

強気材料だけを見るべきではありません。

証券リサーチセンターによると、2025年8月期の12カ月換算売上高では、BAKUNEが全体の86%を占めていました。

つまり、現段階では依然としてBAKUNEへの依存度は非常に高い。

リカバリーウェア市場への参入企業が増え、価格競争が起きたり、ブームそのものが一巡した場合、業績への影響は避けられません。

だからこそ、寝具、WORK、FOOT、インナーといった新カテゴリーの成長率を見る必要があります。

投資家が次に確認すべきなのは、

「BAKUNEが何%伸びたか」ではなく、「BAKUNE以外が何%を占める会社になったか」

なのです。

株価が織り込み始めているもの

9月9日のTENTIAL株は1,807円で取引を終了。

8月31日には年初来高値となる1,912円をつけています。時価総額は約420億円の水準です。

次回の決算発表予定日は10月15日。

ここから株式市場が評価するのは、単なるBAKUNEのヒット継続ではないでしょう。

寝具がどこまで伸びるのか。

既存顧客のクロスセルが続くのか。

店舗展開で顧客層を広げられるのか。

そして「睡眠」という巨大な市場の中で、TENTIALというブランドそのものを確立できるのか。

TENTIALはいま、

「ヒット商品を持つ会社」から「ヒットを再現できる会社」へ移れるのか

という局面にいます。

BAKUNEを生み出したことは、すでに過去の実績です。

これから株価を一段上へ押し上げるとすれば、必要なのは2つ目、3つ目の柱。

だからこそ、TENTIALを見るうえでこれから問うべき質問はシンプルです。

「BAKUNEはどこまで売れるのか」ではない。

「BAKUNEの次に、何を生み出せるのか。」

その答えが見え始めた時、TENTIALはリカバリーウェア企業とは違う評価を受ける可能性があります。

証券コード325A。TENTIALの“第2の成長曲線”は、すでに静かに立ち上がり始めています。

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